※本記事は全10回構成の【相続の基本シリーズ】の第2回です。
「もしも」に備えるために、家族の未来を守る情報をわかりやすく解説していきます。
📚 本シリーズの構成(全10回)
2.「争族」になる前に!遺産分割の基本とトラブル回避法(←今回)
3.相続人がいない?わからない?戸籍の調べ方と“相続人不存在”の対処法
4.遺産分割協議書の書き方と注意点
5.相続放棄・限定承認の判断と具体手続き
6.相続税ってどうやって決まるの?しくみと節税の基本をやさしく解説
7.生前贈与と相続の違いとは?賢く使い分けて節税につなげよう
8.相続でよくある失敗と対策10選
9.公正証書遺言のすすめと具体的事例
10.遺言・家族信託と後見制度の違いと併用メリット
第1章:「争族」って何?相続で家族が争う悲しい現実
「うちは仲が良いから大丈夫」と思っていませんか?
実は、家庭裁判所で起きている遺産トラブル(遺産分割調停)の約75%は、相続財産5,000万円以下の家庭です。
つまり、財産の多い・少ないに関係なくトラブルは起きるということ。
これが「争族(そうぞく)」と呼ばれる悲しい現実です。
代表的な争族トラブル
長男が家を相続して当然と考える vs 他の兄弟が納得できない
親の介護をした子と、何もしなかった子の間で対立
遺言書がなくて“言った言わない”の争いに
相続人の1人が音信不通で手続きが進まない
こうしたトラブルは、「遺産分割」がスムーズに行えなかったときに発生します。
第2章:遺産分割とは?なぜ必要?
遺産分割とは、亡くなった人(被相続人)の財産を、相続人同士で分け合うことです。
財産の種類はさまざま。現金・預金・土地・建物・株・車・骨とう品など、価値も流動性も異なります。
💡遺産分割が必要になるケースとは?
遺言書がない
遺言書はあるが一部の財産しか記載されていない
法定相続分ではなく話し合って決めたい
特定の相続人だけに集中してしまっている
第3章:法定相続分ってなに?
民法では、もし遺言がない場合の“分け方の基本ルール”を定めています。これが「法定相続分」です。
主なパターン
ただし、実際の生活では法定通りに分けると不公平になるケースも多いため、相続人同士で話し合って調整するのが現実的です。
第4章:遺産分割の3つの方法
① 現物分割(げんぶつぶんかつ)
財産そのものを分ける方法。
例:長男が実家の土地・建物、長女が預金、次男が車など。
【メリット】現物が活用できる
【デメリット】価値の不均衡が出やすい
② 代償分割(だいしょうぶんかつ)
特定の相続人が財産を取得し、代わりに他の相続人にお金などで“代償”を払う方法。
例:長男が不動産を相続し、妹に現金200万円を支払う。
【メリット】不動産の売却不要、実家を残せる
【デメリット】代償金の工面が必要
③ 換価分割(かんかぶんかつ)
財産を売却して、得た現金を分ける方法。
例:実家を売却して兄弟で現金を分ける。
【メリット】平等にしやすい
【デメリット】実家が残らない
第5章:実際にあった争族トラブル事例3選
▶ 事例①:実家の相続で兄弟バトルに発展
【背景】長男が同居、父が亡くなり不動産の名義は父のまま。
【争点】「ずっと住んでいたんだから俺の家だ」と主張 vs 妹「私にも相続権あるでしょ」
【結果】売却して現金を折半することに落ち着いたが、関係は疎遠に。
▶ 事例②:遺言書がなくトラブルに
【背景】一人暮らしの母が亡くなり、長男が遺産を独占しようとした
【争点】兄弟は法定相続分の主張、長男は「母は俺に渡すつもりだった」と主張
【結果】調停となり、弁護士費用も発生。相続額より争いの方が大きくなった。
▶ 事例③:生前贈与で不公平感
【背景】次男が生前に500万円をもらっていた
【争点】長男「贈与は特別受益でしょ、差し引くべき」
【結果】協議書にその旨を明記し、相続額から控除する形で合意
第6章:遺産分割協議とは?基本の進め方
遺産分割を話し合いで決めることを「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」といいます。
相続人全員の合意が必要で、1人でも納得していないと成立しません。
▽ 協議の流れ
1.相続人の確定(戸籍で調査)
2.相続財産の確定(不動産、預金、借金など)
3.分割方法の話し合い
4.遺産分割協議書の作成(印鑑証明が必要)
▽ 遺産分割協議書のポイント
相続人全員の署名・実印押印
不動産の記載は「登記簿通り」に正確に
内容が曖昧だと登記・相続税申告で問題に
第7章:トラブルを防ぐ3つの心得
① 財産内容は“事前に見える化”する
「実は借金があった」「名義が共有だった」など、あとから判明すると揉める原因になります。
生前に財産一覧を作っておくとスムーズです。
② 家族会議を開いておく
親が元気なうちに「自分の希望」「介護の話」「不動産の扱い」などを家族で話し合うのが大切です。
何も決めないまま亡くなると、残された家族は判断に困ってしまいます。
③ 専門家を早めに巻き込む
遺産が不動産中心なら、不動産会社や司法書士のアドバイスが有効です。
「生前対策」「協議書作成」「売却の手続き」など、専門家に依頼することでスムーズに進められます。
第8章:不動産がある場合の注意点
遺産の中でも特に問題になりやすいのが不動産です。
実家やアパートなど、売却するのか、誰かが住むのか、管理はどうするのか、決めなければなりません。
▽ 代表的な問題点
誰も住まない実家が空き家に
名義変更せず放置される
相続人が複数で共有名義になり売却できない
固定資産税や修繕費の負担でもめる
▽ 対策ポイント
相続前に「実家をどうするか」を家族で共有
相続後すぐに登記(名義変更)を行う
必要であれば売却して現金化する
第9章:相続で使える“便利な制度”
以下のような制度を知っておくと、スムーズに相続を進められます。
✅ 預貯金の仮払い制度
→ 遺産分割前でも、葬儀費用など必要な支出のために銀行から一部を引き出せる制度(上限あり)
✅ 特別受益と寄与分
特別受益:生前贈与や学費の援助など、特別な利益は相続分から差し引く
寄与分:介護や生活支援をしてきた人は、その分を相続に加算できる
これらを公平に反映させるには、協議書に明記しておくことが重要です。
第10章:まとめ 〜争族を防ぐために“今できること”〜
相続は“財産の話”であると同時に“人間関係の話”でもあります。
遺言書があっても、遺産が少なくても、家族の間に不信感があると争いは起きてしまうのです。
📌 今日から始めたい相続対策
1.財産一覧を作成してみる
2家族と話し合う時間をつくる
3.専門家に早めに相談しておく
4.実家の今後を話し合っておく
相続は、備える人にとっては“安心”に変わります。
備えない人にとっては“トラブルの火種”になります。
📣 次回予告(第3回)
次回は「相続人がいない?わからない?戸籍の調べ方と“相続人不存在”の対処法
」をテーマに、 戸籍の集め方や相続人不存在の対処法をやさしく解説します!
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