【第10回】「遺言・家族信託と後見制度の違いと併用メリット」~家族の未来を守るために、知っておきたい3つの制度~

query_builder 2025/07/09
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※本記事は全10回構成の【相続の基本シリーズ】の第10回です。
「もしも」に備えるために、家族の未来を守る情報をわかりやすく解説していきます。

📚 本シリーズの構成(全10回)

1.相続ってそもそも何?誰が何をもらえるの?

2.「争族」になる前に!遺産分割の基本とトラブル回避法

3.相続人がいない?わからない?戸籍の調べ方と“相続人不存在”の対処法

4.遺産分割協議書の書き方と注意点

5.相続放棄・限定承認の判断と具体手続き

6.相続税ってどうやって決まるの?しくみと節税の基本をやさしく解説

7.生前贈与と相続の違いとは?賢く使い分けて節税につなげよう

8.相続でよくある失敗と対策10選

9.公正証書遺言のすすめと具体的事例

10.遺言・家族信託と後見制度の違いと併用メリット(←今回)




はじめに:なぜ「併用」が注目されているのか?

近年、「認知症になった親の財産をどう守るか」「相続争いを避けるにはどうしたらいいか」という相談が増えています。
その答えの一つが、「遺言」「家族信託」「後見制度」という3つの制度を正しく理解し、状況に応じて上手に組み合わせることです。

この記事では、初心者の方にもわかりやすく3つの制度の違いとそれぞれの役割、さらに“どう併用すれば家族にとってベストな備えになるのか”を丁寧に解説します。



第1章:まず押さえたい!3つの制度の特徴と違い

制度名

主な目的

誰が使う?

効果が出るタイミング

特徴

遺言(特に公正証書)

死後の財産の分け方を決める

高齢者・親など

死後

相続トラブルの防止に有効

家族信託

生前の財産管理・承継

親(委託者)・子(受託者)

契約締結後すぐに有効

柔軟な財産管理ができる

後見制度

判断能力低下時の支援

本人(高齢者等)

判断能力が低下してから

法的に保護されるが制約も多い


第2章:それぞれどんな場面で使われる?

● 遺言書が向いているケース

  • 親が自分の死後、どの子にどの財産を渡すか決めておきたいとき

  • 相続人以外(例:内縁の妻や孫)にも財産を分けたいとき

  • 兄弟間のトラブルを避けたいとき

👉 たとえば…
80歳の父が亡くなった際、遺言書がなかったため、3人の子どもが実家の土地をめぐって大揉め。結果として、土地は売られて現金に。
「きちんと遺言を書いておけばよかった」と後悔したケースです。



● 家族信託が向いているケース

  • 親が元気なうちに、自宅や預金を息子に託し、管理をお願いしたい

  • 将来、認知症になるかもしれない不安がある

  • 財産の承継を“何代か先”まで見据えたい

👉 たとえば…
認知症の母をもつ50代の長男。母名義の空き家を売却しようとしたが、母の判断能力が不十分で後見制度が必要に。
実は母が元気なうちに「家族信託」をしていれば、スムーズに売却できた例も。



● 後見制度が向いているケース

  • 認知症が進み、契約やお金の管理が難しくなったとき

  • 高齢者の財産を法的に守りたいとき

  • 身寄りが少なく、家族による信託が難しい場合

👉 たとえば…
一人暮らしの認知症高齢者。詐欺被害に遭いそうになったが、法定後見人がついていたため、契約を無効にできた。
法律で保護される後見制度の強みが発揮されたケースです。



第3章:3つの制度のメリット・デメリット

ここでは「遺言」「家族信託」「後見制度」それぞれの長所と短所をまとめます。

制度名

メリット

デメリット

遺言(公正証書)

・死後の相続争いを防げる

・法律的な効力が強い

・公証人立会いで安全

・死後にしか効力を発揮しない

・内容の見直しが必要になる場合がある

家族信託

・柔軟な財産管理ができる

・契約直後から効力あり

・認知症リスクに備えられる

・契約書作成が複雑

・専門家の支援が必須

・管理の責任が重い

後見制度

・法的な後ろ盾がある

・財産が厳密に保護される

・家庭裁判所の監督が必要

・本人の自由が制限されることも

・報酬がかかる

ポイント:

  • 遺言は「死後の指示」

  • 信託は「元気なうちの備え」

  • 後見は「認知症以降の管理」

このように、発動のタイミングが異なり、目的も異なります。だからこそ、「どれか1つ」ではなく、状況に応じて複数を併用することが効果的です。



第4章:なぜ「併用」すべきなのか?

併用が効果的な理由は、「時間軸」と「役割分担」にあります。

  • 家族信託で「生前の財産管理」

  • 後見制度で「判断能力が低下した後のサポート」

  • 遺言で「死後の財産の分け方を明確に」

これらを組み合わせれば、スキのない安心な資産管理と承継が可能になります。

たとえば…

  • 父が元気なうちに自宅を息子に信託(家族信託)

  • 認知症が進んだら、後見制度で財産を保護

  • 死後は遺言で相続人にきちんと財産分配

という流れを作ることで、トラブルを最小限にできます。



第5章:併用事例3選【図解つき】

① 自宅を次男に渡したい(家族信託+遺言)

  • 依頼者:70代男性

  • 家族構成:長男・次男

  • 目的:生前は次男に管理してもらい、死後は相続してほしい

対策:

  • 家族信託契約で、自宅の管理を次男に依頼

  • 遺言で「自宅は次男に相続」と明記

👉 管理と相続の両面がカバーできる



② アパート経営の父に認知症の兆候(家族信託+後見)

  • 依頼者:50代長女

  • 家族構成:父・母・長女

  • 問題:父の認知機能が徐々に低下、経営判断が難しい

対策:

  • 家族信託でアパート経営を長女に委任(父が元気なうち)

  • 判断力が落ちてきたら、後見制度を申立て

👉 家族信託で経営、後見で生活全体をサポート



③ 預金・不動産が多く、相続人が複数いる(3制度併用)

  • 依頼者:60代女性

  • 財産:自宅・アパート・預金3000万円

  • 相続人:3人の子

対策:

  • 家族信託で預金とアパートの管理を長男へ

  • 後見制度で財産保護(万一に備え)

  • 公正証書遺言で相続割合を指定

👉 資産管理・意思決定・相続の全てを事前に整理



第6章:よくある質問(Q&A)

Q1:遺言があれば家族信託はいらないのでは?

👉 いいえ。遺言は死後にしか効力がありません。生前の資産管理や売却はできないので、家族信託と役割が違います。

Q2:後見制度は勝手に使えるの?

👉 いいえ。家庭裁判所の申立てが必要で、判断能力が明確に低下していることが条件です。

Q3:公正証書遺言って費用はどのくらい?

👉 公証人手数料は財産額によりますが、数万円~10万円程度が目安です。専門家報酬も加わると10万~20万円程度。

Q4:家族信託は途中でやめられる?

👉 原則、契約の中で定めた条件で終了できますが、受益者や信託目的によって難しいこともあるので要相談。

Q5:どれから準備すべき?

👉 一般的には「家族信託 → 遺言 → 後見の準備」の順で整えていくのがスムーズです。



第7章:不動産と制度の関係~“家”を守るために

不動産は、金額が大きく、思い出も詰まっているため、トラブルが起こりやすい財産です。

たとえば…

  • 遺言書で「長男に家を相続」と書いても、他の兄弟が反対するケース

  • 認知症になった親名義の土地を売れず、相続時に負担に

  • 共有名義のまま放置して、売却もできず空き家化

これらを防ぐためには、

  • 家族信託で管理権限を整理

  • 後見制度で判断能力低下に備え

  • 遺言で最終的な指示を記載

という3段構えが非常に有効です。



第8章:専門家に相談すべき理由

制度を理解した上で、自分の家族に合う選択肢を判断することは難しいです。

  • どの制度を、いつ、どんな順番で使うべきか?

  • 家族関係や不動産の状況に応じて、最適な設計をするには?

  • 将来の税金対策や相続まで考えるなら?

こうした点から、弁護士・司法書士・行政書士・税理士などと連携している不動産会社や相続コンサルタントに相談するのが得策です。



まとめ:遺言・信託・後見をバラバラにしないことが重要

「遺言は死後」「信託は元気なうち」「後見は判断力低下時」

この3つは、人生のどの段階でも重要になる制度です。
どれか一つではなく、「併用する」ことで家族の安心・相続トラブル回避・資産の有効活用につながります。


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